フェミニズムを知るのにおすすめな本を選んだよ
突然ですが、フェミニズムと聞くと何を思い浮かべますか?
怖そうなキャリア志向の女性達が婚期を逃しながら男性と同じようにバリバリ働いて出世したいと主張すること? “女様”を優先して女性専用車両を作り、男性をさらに混雑した電車車両に詰め込み陥れようとしていること?クソフェミやばくね? こういうコメントはよく見かけます。
もし今この記事を読んでくださっている方で、男性でも女性でも、フェミニズムって聞いたことあるけど良いイメージはないと思われている方がいたら、良い悪いではなく一つの学問として、社会に潜む不平等や問題に目を向けるきっかけをくれる本を紹介しますので、手にとっていただけたらと思います。
目次
まず何が問題なのかよくわからない方へ:東大入学式の祝辞
「女性の権利って言うけど、女だからって学校へ行けないなんてまわりに人見たことないし、女性に選挙権もあるし選挙に立候補している人だっているし、私個人は何不自由なく暮らせてるんだけど、一体何が問題なの?日本の女性って超恵まれてるじゃん。」という方へ。まずは2019年4月にメディアでも大々的に取り上げられ話題になった東京大学名誉教授の上野千鶴子先生が東京大学入学式で読んだ祝辞の全文を読んでほしいなと思います。
平成31年度東京大学学部入学式 祝辞
読んでいただいた上で、一つお伝えしておきたいのが、当時批判の的になっていたこの部分。→” あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。ですが、冒頭で不正入試に触れたとおり、がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています。そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。あなたたちが今日「がんばったら報われる」と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。 “
これは努力して東大に合格してきた人たちの努力の成果を批判しているのではないと思います。この入学式に参加することのできた選ばれし新入生のほとんどが、努力が認められてここにいるのです。しかしそこまでの過程で、「努力すれば報われる」と思うことができたこと、それ自体が幸せなこと。しかしこの先、社会にでたら努力しても報われない理不尽なことがたくさんある。参考書には答えがあり、それを勉強してきた成果で大学に入学しても、その後待ち受けている社会に出たら正解のないことだらけです。そして、努力は報われると信じていた大学ですら、男女で入試の得点操作が行われていたりしたわけです。それを鋭く指摘しています。
なんとなく分かったら、具体的にどういう問題が起こっているのか見てみよう「フェミニスト・ファイトクラブ」
まず最初のステップとしておすすめなのが「フェミニスト・ファイトクラブ」という本です。フェミニスト・ファイトクラブは実在するグループで、元は12人の女性が夜な夜な集まって不公平や理不尽を語り合う会としてニューヨークで始まりました。
とにかく軽快な語り口とポップな挿絵が万歳で読みやすいので読書が苦手な方にもぜひお勧めしたいです。基本的にアメリカ都市部の職場で経験する差別や理不尽、不愉快をさらりとかわす方法、深刻ならば誰にどう報告すればいいのか?などなど、アドバスや指南がたっぷり詰まった一冊です。日本に当てはまるものもたくさんありますので参考になりますよ。「こういうときは、どうする」がたくさん書かれていて、日常で当たり前にされている会話や発言の中にある問題にも気づかされます。
ただ、色々な男性を種類分けして、敵と呼ぶ部分があるので男性の方が読むと少し反感を覚えるかもしれません…が、全ての男性を敵呼ばわりしているのではありませんし、本の中で挙げられているものに自分が当てはまらなければご自身が批判されているわけでもありませんので、不満に思うことはないと思いますが、念のためご注意ください!
日本社会に潜む問題について深く知って考えてみよう「女たちのサバイバル作戦」
お次に紹介するのは2013年出版、上野千鶴子先生の「女たちのサバイバル作戦」です。帯にはこう書かれていますー「総合職も、一般職も、派遣社員も、なぜつらい?追い詰められても手をとりあえない女たちへ」
私自身、総合職として日本企業で働いてきましたが、女性だけパートさん・派遣社員さん・契約社員さん・一般職さん・総合職と色々な種類(?)の労働者がいることに入社してすぐ気が付きました。本の中でこれは「女性の分断」と呼ばれています。この「女性活用」のねじれを巻きこした歴史とその実態を理解することができましたし、上野先生ならではの鋭い語り口で丁寧に解説してくれています。現代の社会と政治における問題点がかなりクリアに見えてきます。がっつり活字の本ですが上述の通り語り口もユーモラスで軽快なのでがんがん読めますよ!出版も6年前で最近の政治・社会問題を論じてくれているのでぐいぐい読み進めちゃいます!
女性だけじゃない!男性だって抑圧されている「新編にほんのフェミニズム 男性学」
最後に紹介するのは「新編 日本のフェミニズム 男性学」です。フェミニズムを学んでいく上で、男性についても考えることはとても重要です。この本は新編日本のフェミニズムというシリーズのうちの一冊ですが、この本だけ読んでも問題ないです。
「男の子でしょ、泣いちゃダメ、強くなりなさい」と言われてて育ち、大人になる。あるべき「男性らしさ」で男性たちも縛られている。この本はセクシュアリティーについて多く語られていますが、差別をする側、強い側、力がある側としてしか男性を見たことがない方や、男性としての生きづらさをなんとなく感じているけどそれの正体がわからない方におすすめしたい本です。
私は学者でも何でもないただの一般人で、大学で社会学を学んだ程度の知識しかありませんが、一読者として読んで理解が深まった本をおすすめしました。
日本はジェンダーギャップ指数104位の国で、これは世界が日本を陥れようとしてランキングを下げているのではなく、各カテゴリーを評価・点数付けして、この結果になったのは紛れもない事実です。日本の製品や食べ物を来日している白人の皆さんに試してもらって褒めてもらって、いい気になっているTV番組を鵜呑みにする前に、日本社会に潜む問題と真正面から向き合い、本気で解決していかなければいけないと思います。その問題は数え切れないほどありますが、まずはフェミニズムの観点で一部だけでも知るきっかけになったら嬉しいです 🙂