ルルレモンの名前の由来は日本人差別?噂について企業に直接問い合わせてみた

Cover photo by Dmitriy Frantsev on Unsplash

みなさんはヨガウェアブランドのLululemonは好きですか。私は好きでした
過去形にしないといけないのが残念なのですが、ルルレモンは2004年にルルレモンの創始者が日本人に関する差別的な発言をしたという話があったのを知って以来、好きではなくなってしまいました。

私がこの話を知ったのは2021年のことで、とあるアメリカで活動する日本人YouTuberのビデオで、「ルルレモンというブランド名は日本人に発音できないからつけた、日本人がルルレモンと言えないのを見るのが面白い」というのがブランド名の由来である、と言及されていたからです。それまではこの件について全く知りませんでした。

日本の消費者がこの件を知らずに立派な値段のレギンスを喜んで購入しているのを見るのは心が痛みます。これが本当なのか、ルルレモンという企業としてこの件をどう受け止めているのか、直接ルルレモンに問い合わせたので、ここにまとめます。そして、2022年に創業者がTikTokで説明ビデオを出したので、それにも言及したいと思います。


人種差別発言の詳細

2004年、カナダの「ナショナルポストビジネスマガジン」でのインタビューで、創業者のチップ・ウィルソンが以下のような発言をしたとされています。

“The reason the Japanese liked [my former skateboard brand, ‘Homeless’] was because it had an L in it and a Japanese marketing firm wouldn’t come up with a brand name with an L in it. L is not in their vocabulary. It’s a tough pronunciation for them. So I thought, next time I have a company, I’ll make a name with three Ls and see if I can get three times the money. It’s kind of exotic for them. I was playing with Ls and I came up with Lululemon. It’s funny to watch them try to say it.” 

Wilson in a 2004 interview with National Post Business Magazine

(ウィルソン氏は「ホームレス・スケートボード」というスケートボードブランドを日本に売った過去がある)

訳:日本人がなぜ「ホームレス・スケートボード」が好きかというと、ブランド名にLが入っていたから。日本のマーケティングファームはLをブランド名に使わない。なぜなら、日本語にはLの音がないんだよ。彼らにとってLの発音は難しい。もし次に会社をもつなら、会社名にLを3つつければ3倍の金が儲かるか見てみようと思った。彼ら(日本人)にとってエキゾチックなんだ。Lで色々な名前を考えてみて、Lululemonを思いついた。彼ら(日本人)が(ルルレモンと)言おうとしているのを見るのは面白いよ

現在、このインタビューはオンライン上から削除されており、ナショナルポストビジネスマガジンのサイトを探してもこのインタビューは見つかりません。しかし、ビジネスインサイダーとファイナンシャルポストが元のインタビューを引用する形で残っています。
ウィルソン氏は2015年のニューヨークタイムズのインタビューで「そんなことは言ったことがない」と上記のインタビューの内容について否定しています。

信じるか信じないかはあなた次第と言ったところですが、ファイナンシャルポストに引用されているインタビューの文言がかなりしっかりしているし、火のないところに煙は立たないので、これを無かったことにするのはかなり苦しいのではないかと個人的には思います。
しかも、HomelessLが入っているから日本人にウケたと言う考え方が浅はかだなと思います。彼の持論で行くと、例えばラルフローレンはRalph Laurenなので日本語にないRとLが入っている最強ブランド名ということになり、だから日本で人気だということになります。日本人に発音できない名前がついている海外ブランドだから日本人に人気だとしたら、日本人、めちゃくちゃ単純だと思われてますよね。

よく「日本人はRの発音はできないが、Lはできる!」というコメントを目にしますが、英語のLの発音は日本語のら行とは似て非なるものだと私は思ってます。ハリウッド映画やドラマでLoveと言っている時の口元をよく観察してみてください。舌の裏側が見えるんじゃないかというくらい、舌を思い切り上顎につけてLを発音しています。それに比べると、日本語のら行は舌の動きがあっさりした発音です。なので、舌をしっかり動かしてLululemonを発音すると日本人には難しいと思います。ウィルソン氏も英語ネイティブとして、ら行のようにLを発音する日本人を見て「こいつらLの発音できないんだ」とシンプルに思った可能性があります。

とにかく、「発音に手こずる日本人を見るのが面白い」というのが鬼畜だなと思います。こんなことを言ったという噂が立っている人が作った会社のレギンスは履きたくないです…


ルルレモンに電話してみた

この件について知るまでは、私は普通の一消費者でした。シャツ、タンクトップ、レギンスなど、アイテムをいくつか持っていましたし、愛用していました。割と好きなブランドだったためとてもショックで、日本のルルレモンの窓口に電話して問い合わせてみました。

ルルレモンの回答:そのような噂があることは認識している。(それに対する会社のコメントがどこかにあったはずとオペレーターの方が探してくれましたが、結局見つからず)ルルレモンでは早くからプラスサイズのモデルを採用し、ダイバーシティー・インクルージョンを重要視している。

結局、会社としての正式のコメントがどこかにあるはずと言われたのですが見つからずだったので、本当にこの件について真剣に考えたことがあるのか、ただの噂と言って逃げているだけではないか、という印象を受けました。そして苦し紛れにプラスサイズの話を出してきたのも違和感ありました。結局、当時の会社のトップが発言したという事実を否定しているため、こういった質問に対する真剣な回答を会社として用意していないのかなと思いました。会社として噂と断定しているそうなので、信じるか信じないかはあなた次第ということになります。


2022年 ウィルソン氏がTikTokで社名の由来に言及

2022年7月に、ウィルソン氏が自信のTikTokにてルルレモンというブランド名の由来について、視聴者からの質問に答える形で説明する動画を投稿しました。(ここに貼っているのはパート1で、パート2・3もあります)

@chipwilson.official Reply to @jonpas PART ONE. Follow for part two. #chipwilson #lululemonfounder #lulufounder ♬ Summer day – TimTaj

このビデオで説明していることが、前述したインタビューの内容と重複しています。

過去のインタビュー:Lは日本語にはないから日本人にとってエキゾチックに聞こえる、発音できない日本人を見るのが可笑しい
今回のTikTokビデオ:Lの音は日本語にはないから、日本人でも特に若者にはAuthenticに聞こえる

私はこのビデオを見てますます怪しいと思いました。「発音できない日本人を見るのが面白い」という部分を消しただけではないかと。
しかしながらご本人も会社もただの噂だと断言していますので、この件に関してはご自身で判断していただければと思います。


あなたはルルレモンを買いますか?

ここまで読んでくださった方、いかがでしたでしょうか。
もうウィルソン氏はルルレモンから退いているので関係ない、という意見もあると思います。(ウィルソン氏がルルレモンのCEOだったのは2005年まで。その後は取締役会会長として2015年まで在籍)2004年なんて大昔のことを今更騒ぐのはナンセンス、という意見もあると思います。「発音できないのを見るのか面白いという発言に悪意はないのでは」という意見もあるかと思います。(発音できない様子が可愛いという意味だったのだとしたら、同じレベルの人間と見られていない、格下の存在に見られているのでは思いますし、悪意がないなら「そんなことは言ったことがない」と火消しに走る必要もなく、堂々としていればいいと思うのですが。)

ただ、このような人種差別的では?と指摘されるような内容の発言をしたという噂(しかもブランド名の由来)があったにも関わらず、断固として人種差別に反対するという社としての姿勢は見当たらず、むしろダンマリを決めているのは残念でなりません。

一方で、ルルレモンは世界で人気を集めるブランドであること、商品の質が良いと評判なことは確かです。


個人的にはもうこの一連の事実で、たとえ噂だったとしてもルルレモン買う気は失せましたし、持っていたルルレモンのアイテムは全てメルカリで売りました。全てすぐに売れたのでルルレモンの人気を目の当たりにしましたが、その人たちはこの件について知った上で買っているのか、疑問です。

買い物は投票。噂を信じるのも、買うかどうか決めるのも全てあなた次第です。